次元交差:人間以上、人間未満

間借り状態のままに地上世界を生きる、はみ出し人間の霊的旅路や思い

3.11震災‐当日午後~地震発生前

2011年3月11日。正午過ぎ。
早めの昼食を摂り、休憩後、車を運転して買い出しに向かいました。家を出たのは午後1時前ぐらいだったと思います。
この日の予定は、まずは南東へ。南隣の町にある行きつけのスーパーマーケットへ。次はそこから西進して高速道路の取り付け道路を通って私の住む町の西隣に位置する町にある小じんまりしたショッピングモール?(大きな駐車場を囲むように数種の平屋の店(屋根続き)が並んでいる施設へ行く計画です。そこでは100均とドラッグストアで買い物です。そして東進して帰宅という順路です。

最初のスーパーマーケットで手際良く買い物を済ませ、高速道路の取り付け道路を西へ進んでいました。そして国道一号との大きな交差点近くにやってきたところで渋滞にはまりました。交差点の信号までの車列はノロノロと断続的に進みます。渋滞の距離は…だいたい300mぐらいでした。少しずつでも進んでいましたので、イラつくことも無く、頭の中は冷静でニュートラル状態でした。

交差点の信号まで150mぐらいのところに川がありました。小さな川なので道路に橋が架かっているのですが、道路わきにかろうじてそれらしき低い柵のようなものがあるだけで、気を付けて見ないとそれが橋であることに気付かないくらいです。川は道路を横切っているのですが、道路下では完全に暗渠になっているので、道路上からは全くわかりません。

その日、川の傍の道路わきには大きなクレーン車が停まっていました。何やら川の改良?工事中で、クレーンのアームが立くそびえています。私の車は信号待ちの渋滞の中、ちょうどそのクレーン車の手前で停止しました。
クレーンのアームに視線をチラリと送った時、私の口から急に言葉がとび出しました。「今ここで地震でもあったら…、あれ(アーム)が倒れて来そうで怖いよナ」。そう言ってから私は『?』と思いました。
クレーン車のアウトリガーはしっかり出されていて、周りは交通規制がされていないけれど道路幅が広いし、その時間は工事の作業が止まっていてクレーンも動いていませんでした。なので特に怖さはありません。まぁもし地震が起これば渋滞中なので危険が無いとは言えませんが、周囲には建物があまり無いし道路が広いので車を捨てて逃げることもできます。『何も考えていなかったのに、なんでそんなこと…言ったのかなぁ』と思いながらも、それに拘ることなく(意識は)スルー。両目は渋滞する前方に注意を払います。

渋滞の車列がまた少し進みました。そして次に停止した時でした。
突然、目の前の景色が一瞬揺らぎました。…というより…むしろアナログの映画フィルムがバチッとコマ飛びするような感じでした。そして瞬間、聞こえていた音が途切れ無音に。すぐに元の状態に戻りましたが、その短い時間の中で、不思議な感覚を体験しました。
頭の内部…脳の分身?でしょうか、脳そのものと同じ位置に重なっている弾力のある何かが動いたのです。それも…塊のまま…丸ごとグワンというかギュィンというか…そのような感触を伴って、まるでゴムのように伸びながら肉体頭部の外へ出て行き、すぐに戻って来たのです。方向は斜め左前方の斜め上方です。頭の外に出た感じはありましたが、その出た空間は、単なる肉体の外の「ここ」の空間ではなくて、別の空間のようでした。でも、それが何処なのかはわかりません。言えるのは瞬間に暗い空間?のような場所を認識できただけ。ただ、往復するその間は何やら気持ち悪い感触でした。

元の状態に戻った時、「今の何?!」と私は思わず声に出していました。過去に何度も空間が瞬間揺らぐ現象を体験して来た私ですが、頭の中から「何か」が外に出て戻って来る感触を味わったのは初めてでした。
私は周囲を注意深く見回してみましたが、現象が起こる前と変わった様子はありませんでした。自分自身にも何の変化も感じられません。それでも、過去の「空間が揺らぎを感じた」時の経験から少し考えが浮かびました。『何かあるのかしら…。大きな事故か、それとも大きな自然災害とか…。』
そんなことが頭をよぎったのですが、『生活用品の買い物をしなきゃ』という思いが勝ちました。自分の状態も大丈夫そうだったので、とにかく周囲の状況に気を付けながらも、そのまま買い出し続行を決めました。直進して交差点を抜けて、それからすぐバイパスに上がって、10分も西進すれば次の目的地です。

渋滞の車列が進み、いよいよ大きな交差点の信号手前数十メートルのところまで来ました。次に信号が変わるタイミングで交差点を通り抜けられそうでした。
信号が変わり、車を走らせ始めた時、何故か急に『家に帰りたい』衝動に駆られました。このまま信号を直進せずに右折すれば、2キロほどで家に着くことができます。
『帰りたい…帰りたい…』心の底で私の気持ちが帰宅を促しています。でも、もう一人の冷静な…というか買い出しを続行したい自分がいて、『今日すべて(買い物を)終えたい』と主張します。2度手間はガソリンが勿体ないし、何より、自宅の生活必需品のストックが少ないので先延ばしにしたくないのです。

数分前に経験した異様な感覚と帰りたい衝動で少し不安もありましたが、私は半ば強引に?信号が青になった交差点を曲がることなく直進しました。買い物を続行することにしたのです。

・・・つづく・・・