次元交差:人間以上、人間未満

間借り状態のままに地上世界を生きる、はみ出し人間の霊的旅路や思い

消え失せた玩具

小学生の時のこと。10歳ぐらいだったような気がします。いや、…高学年だったかも。。。

家にカメラの玩具がありました。(忘れましたが…)家族の誰かが貰って来たようです。
それはガラケースマホが主流になる前のコンデジほどの大きさだったと思いいます。でも、出来事は昭和の時代ですから、当然、メカニカルなフィルムカメラを模した形です。

さて、そのカメラの玩具。写真は全く撮影できません。ですが、形だけを模した置物でもありません。
それは中央部分の筒状の出っ張り(カメラレンズとその絞りを調整する部分)に観音開きの扉が付いていて、シャッターボタンを押すとそれが開く仕組みになっていました。その内部にはネズミが収納されていて、扉が開くと同時に勢いよく飛び出してくる、というものです。そのネズミは両端を絞ったようなコイル状のバネに布をかぶせて目鼻や尾を付けただけの簡単な作りですが、けっこう楽しく遊べました。

ある日のこと。居間で独り、そのカメラ玩具で遊んでいたところ、我が家の飼い猫がやって来ました。その猫がネズミに激しく反応するので笑い転げながら、しばらく一緒に遊ぶことになりました。猫が飛び出たネズミを追いかけ、銜えて私のところに持ってくる。私はそれをまたカメラに仕込んで…。

それを何度か繰り返していた時、飛び出たネズミが壁に当たり、ソファーベッドの背もたれと壁との隙間から下に落ちてしまいました。それを目で追っていた猫は、ソファーベッドの背もたれに登り、壁との隙間から潜り込むようにベッドの下へ向かいました。…が、しばらく後、ソファーベッドの端(後ろ=壁沿い)から出て来て私の前を通りすぎて、どこかへ行ってしまいました。

猫は私の方をチラリとも見ませんでした。名前を呼んでも知らんぷり。頭を上げ、顔を真っ直ぐ前に向けて、まるで固まったような表情。ゆっくり歩いて去って行きました。口には…何も銜えていませんでした。

猫の様子が変だと思いながらも、きっと遊びに飽きてしまったのだろうとも思いました。私はソファーベッドの下をのぞき込み、ネズミを探しました。でも、どの方向から探しても無いのです。くまなく何度も探しましたが、ありませんでした。念のため周囲も探しましたが…無い。壁に当たって隙間から落ちた時、床に当たる音を聞きました。目の前には転がり出てきていませんし、猫も手ぶらで去って行きました。ならば、ネズミはどこに。。。

その後、部屋の模様替え時やソファーベッドの処分時に再度探してみましたが、やはり出て来ませんでした。
(何十年か後、家の建て替え時に片付けをした際にも、どこの部屋からも形跡すらなかったです)
あの時挙動不審?になった猫は、ソファーベッドの裏側で何を見たのか、あるいは何かを見たのか…。
玩具のネズミは…いったいどこに消えたのでしょうか。。。