次元交差:人間以上、人間未満

間借り状態のままに地上世界を生きる、はみ出し人間の霊的旅路や思い

クンダリーニの上昇と深淵(2)

その夜、布団に横になって間もなくのこと。金縛りが来ました。首を絞められたようにウっとなり胸を締め付けられ、そして暗闇の中、白っぽい紐筋が見え始め急激な上昇が始まりました。
『ほかに方法は無い。大丈夫、できる!絶対に戻って来る!意識を保ってなんとしてでも戻る!』自分にそう言い聞かせながら覚悟を決めました。それでもダメならその時はその時、仕方がありません。意志を強く持って挑みました。

上方へ持って行かれる感覚と胸辺りの強烈な痛み、そして息が出来ない苦しさに耐えながら、私は意識を体の中心(丹田辺り)に集中し、そこから背骨に沿って『頭頂部に向かう』ことを意識しました。背骨は頭に繋がってるし、…ってことは脳にもつながってるから、考えとしては妥当だと思ったのです。ちなみに「丹田」を意識したのは、以前、カルチャーセンターでっ数か月、気功を習ったことがあったので、そうかな、と。
『私はここの一点(丹田)に居る』『背骨に沿って頭頂へ移動する』と意識しながらゆっくりと私=点を動かして行きます。

その時、不思議な感覚を経験しました。それは。
小さな点となった自分の意識が背骨に沿って頭頂へ向かって移動しているのを、外(肉体の外側と思われるところから見ている…らしい)自分がいました。
それと同時に、背骨に沿ったところを頭頂部方向にゆっくり進んでいる点の中にも自分がいました。
2つの自分という意識が同時に存在して、それぞれの状況を見ている、あるいは感じていたのです。

やがて「中」の私は頭頂に達したらしく、『スポッ』という感じで外へ出ました。
そこには広い空間が広がっていました。それまでの苦痛は嘘のように消え去りましたが、少しだけ詰まる感じ…胸が詰まったような感じがありました。ただそれは取るに足らないほどのもので、苦にはなりませんでした。

私(意識の)は中空に浮かんでいました。辺りは真っ暗で何も見えません。と言いうより何も無いようでした。そしてその空間の感触はとてもピュアでした。曇りが無く少しも淀んでいない感じでした。広がりがあることはわかるのですが、「果て」があるのかどうかは…わかりませんでした。

私は早々に戻ることを考えました。好奇心でもっと観察したいという思いはありましたが、とにもかくにも今は「戻る」ことが大事だと思ったのです。戻れない=死、なのだろうから、と。
何故か残念と思いながらも「戻る」と念じてみました。そして…。私は戻って来ました。
身体はいつものように熱くなっていました。汗もかいていました。どうやって戻ったのかは…意思の力としか言えません。特別な何かがあったのかどうかは…わかりません。
私の心にはただ、無事にやり遂げることができた、という安堵感だけがありました。