次元交差:人間以上、人間未満

間借り状態のままに地上世界を生きる、はみ出し人間の霊的旅路や思い

エンジン停止の怪

2014年12月。たしか…8日の午後というか夕方近くだったかと。
私は車を運転して隣街へ行きました。所用を終えての帰路のことです。
交差点で信号待ちとなりました。その交差点は上り坂の先=上り切ったところにあります。十字路ではあるのですが、少し斜めに交わっていて、直進は交差点を過ぎると途端に道幅が狭くなります。また、右折するとすぐに、やや広い川(2級河川)に架かる橋となります。直進方向を除く3つの道路はいずれもセンターラインがある主要道路になっています。

私はその交差点を右折して橋へ向かうべく車列の最後尾につきました。ブレーキを踏んで停止した後すぐに車の右ウインカーを点灯させました。ハンドルに両手を置いたまま『すぐ前の車も右折だな』と確認し、その次に『私の前に何台いるのだろうか』と…ちょっと伸び上がって前方の車列に目を向けたその時でした。
『バチッ!(音はありません)』一瞬の出来事でした。突然視界が映画フィルムのコマ飛びのようになったのでした。それと時を同じくして、右膝の内側(右膝頭の左側面)に何かが軽く当たった感触がありました。その感触は柔らかい布が掠ったような感じでした。ふわっと軽く、撫でるように触れたというか…。まるで誰かにそっと触れられたみたいに。でも、触れたそれ(何か)が手であるとは思えません。感触が全然違う。。。

『えっ?何?』。視界のコマ飛びもさることながら、膝横の感触が不思議でした。私はハンドルに置いた両手はそのままに視線だけを右脚に落としました。
左足は床にあり、そして右足はブレーキを踏みこんでいます。というわけで、両膝は少し開き加減になっています。なので物理的に右膝内側に触れることは可能です。でも…。もちろん、周囲には触れるような何かはありません。『何だったんだろう…』

そこで我に返りました。信号が替わったら発進しなければなりません。考え事をしている場合ではないのです。
私は視線を前方に戻しました。信号は未だ赤でした。すぐ前の車のウインカーが点滅しているのを見ながら…。
と、そこで…気づいたのです、私の車のウインカーが止まっていることに。
『あれっ? 何で止まってるんだ?』。さっきまで確かにダッシュボートに表示があってカチカチと音がしていたのに、表示が消えていて、だから音もしません。『おっかしいなぁ…』私はハンドルから右手を離し、ウインカーの操作バーを動かしました。…動くのですが、点滅ライトの反応がありません。『えっ?故障?』何度か繰り返していると、そこでまた気づきました。

車内がしーんと静まりかえっています。私は車内をぐるっと見回します。何も変わったところはありません。助手席側の窓ガラス越しに見える景色が心なしか鮮やかに見えるような気がした以外は。
耳を澄ますと、外の音は閉めたガラス越しに小さく聞こえはします。でもそれは本当に小さな音なので、車内はとても静かなのです。私は静寂の中に居るように感じました。

『エンジンが止まってる…?』『ウインカーが消えてる=エンジンが止まったから=故障?』そんなふうに思ったのでした。そして『これはマズイ。信号が青になっても動けない=後ろの車に大迷惑をかける、どうしよう』と、ちょっと焦りました。
前方の信号を見ると、未だ赤です。『それにしてもやけに長いな…』と思いました。この道は何度も通ったことがあるのですが、そんなに長い(時間)信号だと思ったことはありません。ここはバスも通りますし。まぁ長く待つのはこの時の私にとってはありがたいことですけれど。なぜなら、対処する時間が稼げるから。
そうは言ってもこのまま手をこまねいているわけにはいきません。いったん降りて助けを求めようかとも思いましたが、とりあえずエンジンキーを戻して再始動してみることにしました。ちなみに、この時の私の車は一般的な物理方式のキーです。キーを差し込んで回してエンジン始動するタイプです。

右手をエンジン・キーに伸ばしました。私の車のエンジン・キー位置はハンドルのすぐ右側でダッシュボード下部にあります。これまで何度も操作して来たので位置の把握が出来ています。なので手を伸ばせばたいてい探さずにつまめます。指にキーが触れました。左に回して戻そうとした時です。「あれっ?!」
キーが全く回らなかったのです。つまり、既に戻っていたのです。それはキーを左に回してエンジン停止の状態ということです。
『エンジンを止めた?誰が?…私が?、…いや、私は止めてないし。だってハンドルを握ったままだったじゃん。ウインカーが止まっていることに気づくまで腕は動かしてないし…だから握ってたじゃん。それまで両手がハンドル上部を掴んでいた感触も掌にずっとあったし…』、『どうなってんの?ありえない…!』

・・・つづく・・・